2026/08/04 13:45


遠い昔の話になるかもしれませんが、皆さんにはかつて「将来の夢」を持っていた頃があったかもしれません。わたしにもありました。

昔は小学校の卒業文集には「私の夢」が書かれていたものでした。

お茶の専業農家の長男である自分が書いたのは「農業をやること」。友達はみんな輝きいっぱいの夢を書いていて、それと比べて自分の夢はあまりに小さく思え、寂しささえ感じたものでした。

そんな小さな夢でしたが、それをかなえるには思いのほか長い時間がかかりました。
地元の静岡大学農学部に進み、卒業論文のテーマを「企業的農業経営の可能性」として、一生懸命に考えたのに、その答えが見つかりません。静岡の茶業も長期的な低迷に入り始めていました。

「農業高校に答えがあるかもしれない」
そう考えて私は高校の農業教員になりました。教員生活は充実していて「これは天職かもしれない」と思うこともありました。
しかし、生徒から「先生、農業って楽しいですね。農業をやるにはどうすればいいですか?」と相談されるたびに「とりあえず大学の農学部に進んだらどうかな」と言っている自分がいて、それがとても嫌でした。

そして、子供たちに農業の可能性を示すには、自分自身が農業をやろう、そう思うようになりました。

とはいえ、何をどう始めればいいのかが見つかりません。そもそも、「農業をやりたい」と言う人はいても「工業をやりたい」「商業をやりたい」と言う人はいません。
それは、工業や商業が多様な職種に分かれているからです。実は、農業も同じで、何を作るのか、どうやって作るのか、無数の選択肢があります。
「自分に合った山はどれなのか? 登る山を間違えたら、取り返しのつかないことになるかも」と考えるうちに、ますます踏み出せなくなり、その答えを見つけるまでに長い時間がかかりました。

今、私は農業法人を経営し有機野菜を栽培しています。自分の夢の実現に向けて、まだまだ山を登っている途中です。頂上はまだ見えません。そしてこの度「NPO法人有機農業を広める会かけがわ」を立ち上げました。この活動は、私個人の活動というよりも地域全体の活動であり、「自分が登ろうとしてきた道」とは少し違うかもしれません。しかし、別の道にも目を向けることで、かえって「山の頂上」に近くなる、あるいは頂上からでなくても素晴らしい景色が広がっている場所を見つけることができるかもしれない、そんな風に思っています。

有機農業は生産者だけでは実現しません。地域の人々の協力があって初めて成立するものです。ぜひ、お力添えいただけたらそれほど嬉しいことはありません。

(NPO法人 代表 大角昌巳)

静岡県立農業経営高校 茶業担当時代(27歳、当時出たばかりの乗用茶刈機にて茶業専攻生徒と)