2026/08/04 17:50
皆さんは「農業をやりたい」と思ったことはありますか。
「農業をやりたい」という言い方は、考えてみると少し不思議です。例えば同じように「工業をやりたい」とか「商業をやりたい」とは言いません。なぜ農業は漠然とした言い方になってしまうのでしょうか。
個人的には、農業という言葉には職業だけでなく、「生き方」としての意味も含んでいるからだと思います。英語で農業は「アグリカルチャー(Agriculture)」と言います。語源はラテン語の「Ager(畑)」と「Cultura(耕す)」です。生活や暮らしに関わる「文化(Culture)」という言葉もまた、「耕す」というニュアンスがあります。このように考えると、本来のアグリカルチャーは、暮らし方や生き方に近い意味合いが含まれている気がします。
とはいえ、職業としての農業もあります。単一の品目を安定供給したり、原材料や加工用途としての野菜を作ることもまた農業です。個人的に、こうした経済的な意味合いの強い職業としての農業は「アグリビジネス」として捉えたほうがいいと思います。
(農業が「職業」として意識されるようになったのは、大量生産大量消費の時代、高度経済成長期の1960年代以降だと思います)
それ以前は、「食べるものをつくる」ことは生活の一部であり、ごはんを炊く、お風呂をわかす、子どもを育てるといった日々の営みであり、「職業」というより「生業(なりわい)」でした。職業としてことさら意識することのない、暮らしや生活そのものです。
そしてそのころに行われていたのは有機農業です。しかし、経済成長とともに、農薬や化学肥料を使って単一作物を大量に生産し、都市に出荷して収入を得る「ビジネスとしての農業」が広がりました。現代では、農薬や化学肥料を用いて行う農業を「慣行農業」と言います。しかし、「慣行」とは「昔から続く、普通のやり方」という意味であって、「農業」本来のあり方を考えると、有機農業が「慣行」であった時間の方が、ずっと長いのです。有機農業を「特別な農業」と思うと、難しく感じるかもしれませんが、「昔から普通にやってきたこと」だと思えば、見方が大分変ります。
農業が生業(なりわい)だったころ、人びとは農作業に出かけることを「野良(のら)に行く」と言いました。有機農業は生物多様性であり、有機農場は命のゆりかごです。いろいろな植物が育ち、虫や動物がいて、鳥の鳴き声が1日中聞こえます。農業がビジネスになった今も、有機農場は野良(のら)のままであり、どこか生活や暮らすことへのヒントが隠れている気がします。
(NPO法人代表 大角昌巳)

